「生まれてきてよかった」と心から思って死ねること。それが、私が死ぬまでに成し遂げたいと思っている唯一のことです。
人間という生物が、他に害を及ぼすばかりの生き物ではない、ということをわずかでも証明してから死にたい、と。
私が美術や音楽の分野の優れた創造物を探しまわっているのも、「少なくとも過去(と現在)にこんな素晴らしい創造物を残した人間がこれだけいる」
ということを実感したい(実感できる)からです。そして私もその最後尾に並ばせてもらえるようになれるだろうか、という希望を新たに持てるように。
京都産業大学の学生がイタリアの教会に観光で訪れた記念と称して、マジックで教会に自分の名前と日付を落書きしたそうです。
別に何かを創造する人生ばかりが立派とも思いませんが、人間の誇りを体現している創造物の価値の片鱗すら感じることができないのは
(そこに平然と自分の名前を残すくらいですから、自分のした行為の意味すら理解できていないのでしょうが)あまりに寂しく、お粗末な話です。